堀江被告の実刑は重いか？

• 堀江被告に懲役２年６ヶ月の実刑判決が出た。まだ地裁なので今後高裁、最高裁と控訴は続くだろうが、１つの大きな司法判断である。


• 堀江被告は無罪を主張していたが、さすがにオーナー社長が知らぬ存ぜぬでは済まされまいというのが大方の感情だろう。争点は執行猶予が付くかどうかで、こちらも付くと予想していた向きも少なくなかったと思われる。だから「実刑」と言う言葉はセンセーショナルに報じられている。


• 証取法違反で実刑というのは、珍しいのだろう。私は他例を知らないので何とも言えないが。粉飾決済というのは、これまでは財務的に窮地に立たされた企業が、存続のために仕方なく（？）脱法したケースが多いのだろう。やはり日本人だ。個人より会社、会社を守るために経営者は時に見境を失う。


• そういう意味では、堀江被告は違う。欧米的と言っては御幣があるが、会社を守るというよりは個人の利得に直結した判断を重視し、これまで舵取りをしてきたように思える。無関係ではあるが、山一證券社長の涙の記者会見を思い出した。日本人はああいう絵を好む。


• 判決理由に「全く反省が見られない」とあったらしい。それはそうである、無罪を主張する人間が反省はしない。憤るだけだ。しかしそこに若さ、甘さがあったと思う。堀江被告は心底、法を犯していないと思っていたのだろう。白か黒かでグレーはない。法に抜け穴があれば、そこを突いて利益を求めても良しとする発想はあまりに機械的で人間味が感じられない。倫理観、道徳観が見えてこない。


• 私は堀江被告が可哀相だ。実刑云々の話ではない。人として哀れに思う。おそらく両親・家族・社会などから、必要な愛情を受けて成長できなかったのではないか。彼の成長過程や家庭事情など詳しく知る余地も無いが、あまりに行動や発言が殺伐としている。ドライである。それが「利益を求めるストイックさ」「新しさ」として持て囃されたのも事実である。


• 情状酌量とは「確かに法を犯したが、その経緯や本人の反省には情けを汲み取る一定の価値がある」というものだと勝手に定義している。そしてその結果「執行猶予」が付くのだろう。理由があったにせよ、法を犯したことを事実として受入れ、それに対して深く反省をしている。反省によって刑量が減免されることに誰も異論はない。であれば、反省なき場合は酌量の余地がないわけだから、執行猶予など付かずに実刑となるわけだ。


• 実刑判決に対し「司法が世論になびいた」との感を持つ向きも多いだろう。法律とは本来、本質的な善悪を定義するものではなく、その時々の時代の価値観に照らし、世の中の秩序を守るためにつくり、そして変えていくものだ。盗人が闊歩しても世の中の秩序が保たれる時代であれば、窃盗罪は存在しない。


• 堀江が憎たらしいから、堀江みたいな奴が金儲けできるのは納得がいかない、そういう感情を抱く個人も多くいるはずだ。そういう個人の感情が、やがて世論となり価値観となっていく。そして司法がそれを価値観として認めるならば、「世論になびいた」としても仕方がないであろう。


• 堀江被告には、控訴などせず考えを改めて実刑を受け、「ライフサイエンス」や「宇宙事業」などの人類に役立つ活動を始めてもらいたい。悔い改め、再起を誓う若者に誰が石を投げようか。